施設ケアマネジメントの基本の「き」①

どのような仕事でも、何(どんな法律)に基づいているかを知っておかなければいけませんよね。施設ケアマネジメントを行う専門職、つまり施設介護支援専門員が業務を行うに当たっても、いくつか押さえておかないといけない法律があります。まずはそこをひも解いてみましょう!

1.施設介護支援専門員の存在意義 ―法的根拠から―
(1)介護保険制度の3つの基本理念
自立支援
利用者本位・利用者の選択の尊重
予防・悪化の防止

👇根拠 ※介護保険法(平成九年法律第百二十三号)

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

(介護保険)
第二条 介護保険は、被保険者の要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)に関し、必要な保険給付を行うものとする。
2 前項の保険給付は、要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならない。
3 第一項の保険給付は、被保険者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、被保険者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者又は施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。
4 第一項の保険給付の内容及び水準は、被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むこ とができるように配慮されなければならない。

(国民の努力及び義務)
第四条 国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。

(2)介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)とは・・・

👇根拠 ※特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準
    (平成十一年三月三十一日厚生省令第四十六号)
【従来型】
(基本方針)
第一条の二 指定介護老人福祉施設は、施設サービス計画に基づき、可能な限り、居宅における生活への復帰を念頭に置いて、入浴、排せつ、食事等の介護、相談及び援助、社会生活上の便宜の供与その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることを目指すものでなければならない。

【ユニット型】
(基本方針)
第三十九条 ユニット型指定介護老人福祉施設は、入居者一人一人の意思及び人格を尊重し、施設サービス計画に基づき、その居宅における生活への復帰を念頭に置いて入居前の居宅における生活と入居後の生活が連続したものとなるよう配慮しながら、各ユニットにおいて入居者が相互に社会的関係を築き、自律的な日常生活を営むことを支援しなければならない。

「居宅における生活への復帰」
→介護保険制度は在宅での生活を支えることが中心になっているため、施設の支援においても在宅への復帰が念頭に置かれている。
「生活の連続」
→ユニット型特養で実施されるユニットケアは、入居後も入居前と同じ生活ができるように支援することが基本的な考え方になっている。
「入所」と「入居」
→従来型は「通う場所(通過施設)」、ユニット型は「生活の場」というとらえ方。
「自立」と「自律」
→自立は「自分のことを自分でする」こと、自律は「自分のことを自分で決める」こと。

○自立とは
お年寄りにとって、自分ひとりでできること・できないことを明確にし、できないことに対しては、きちんと援助を求められる環境にあること
どんな援助を受けるかを選ぶことができること。
受けた援助に対しては、「ありがとう」「おかげさま」といった健全な感謝の気持ちを表すことができること。
以上の3点が可能な状態が、介護現場で大切にしている自立で、これを支えるのが自立援助です。
※引用:髙口光子(2016)『生活支援の場のターミナルケア介護施設で死ぬということ』講談社,p.51-52


(3)介護保険制度における介護支援専門員の位置づけ、役割

👇根拠 ※介護保険法(平成九年法律第百二十三号)

①定義
(定義)
第七条 
5 この法律において「介護支援専門員」とは、 要介護者又は要支援者(以下「要介護者等」という。)からの相談に応じ、及び要介護者等がその心身の状況等に応じ適切な居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービス(、介護予防サービス若しくは地域密着型介護予防サービス又は特定介護予防・日常生活支援総合事業を利用できるよう市町村、居宅サービス事業を行う者、地域密着型サービス事業を行う者、介護保険施設、介護予防サービス事業を行う者、地域密着型介護予防サービス事業を行う者、特定介護予防・日常生活支援総合事業を行う者等と)の連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するものとして第六十九条の七第一項の介護支援専門員証の交付を受けたものをいう。
②義務
(介護支援専門員の義務)
第六十九条の三十四 介護支援専門員は、その担当する要介護者等の人格を尊重し、常に当該要介護者等の立場に立って、当該要介護者等に提供される居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービス、介護予防サービス若しくは地域密着型介護予防サービス又は特定介護予防・日常生活支援総合事業が特定の種類又は特定の事業者若しくは施設に不当に偏ることのないよう、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない
2 介護支援専門員は、厚生労働省令で定める基準に従って、介護支援専門員の業務を行わなければならない。
3 介護支援専門員は、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。
(名義貸しの禁止等)
第六十九条の三十五 介護支援専門員は、介護支援専門員証を不正に使用し、又はその名義を他人に介護支援専門員の業務のため使用させてはならない。
(信用失墜行為の禁止)
第六十九条の三十六 介護支援専門員は、介護支援専門員の信用を傷つけるような行為をしてはならない。
(秘密保持義務)
第六十九条の三十七 介護支援専門員は、正当な理由なしに、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。介護支援専門員でなくなった後においても同様とする。


忙しい業務の中で(施設介護支援専門員は介護職との兼務も多いので・・・)、自分の立ち位置を見失うこともあるのではないかと思います。

そんな時は、根拠となる法律を見直してみると、自分(自分の専門性は)は何なのかを思い返すことができます。

 

2020年05月25日