スーパービジョンの定義: 「対人援助を行う施設や事業所等において、スーパーバイザーによって行われる専門職としての援助者を養成する過程である。」
1.ケース紹介
概況 |
Mさん(女性・89歳)−要介護5。寝たきりの状態で、意思疎通も困難な状況。排泄、食事、入浴などの日常生活の全てに全介助が必要。痰が絡みやすく吸引が必要。 介護者:長女。在宅で介護している。サービスはベッドのレンタルのみ。吸引は長女が行っている。 |
相談内容 |
Aケアマネジャー(男性・20代)より: 1年前からケアマネとして関わり始めた。前任のケアマネジャーより、長女はいわゆるクレーマーで何かにつけクレームをつけてくる。また、思いこみが激しく、自分が正しいと思った事は他人がどんな助言をしても聞き入れない、との引き継ぎを受けていた。 今まで、 ・血圧が160−95で血圧が高すぎると受診して、Drから「大丈夫」と言われたことに腹を立て文句を言う。誤嚥性肺炎で入院した際も、看護師の態度がひどい、Drは何もしてくれないなどと言い、強制的に退院させる。 ・デイサービスを利用した際に、ベッド臥床の時間が長くて寝たきりがひどくなった、と利用を中止する。 ・訪問看護を利用してもバイタルチェックの仕方が悪いから病気がひどくなった、と利用を中止する。 ・行政に対して、Drやデイサービスのスタッフの態度が悪いなどの苦情を言う。 などなどのエピソードがあったとの報告あり。
・自分がケアマネジャーになって実際に関わってみると、その通りだと腹の立つことが多い。ショートステイやデイサービス、訪問看護の利用を勧めるが拒否。 ・訪問する度に、前任のケアマネジャーは何もしてくれなかった、Drも信用できないなど文句を言うばかり。Aケアマネジャーに対しても、自分たちの生活が全然良くならない、しっかりと援助をして欲しい、と訴える。さらに、Aケアマネジャーの知らない内に、介護しやすいように40万円をかけて自宅を改修していた。 ・この件について、行政に相談するが、「しょうがない、静かになるまで待って下さい」「こういう人もいますから」との返答で相談にならない。
Aケアマネジャーは、自分は人の悪口を聞き、役に立たないと文句を言われ、肝心な時には相談してもらえない、ケアマネジャーとして失格なのではないかと考え悩んでいる。 また、こんな家族とうまく付き合っていく自信が無いとも思っている。 |
2.事例検討 ・検討内容:「ケアマネとしてこのままの対応でいいのか。」 ・バイジーが困難を抱えている事例を出す。 ・スーパーバイザーが存在しないピアスーパービジョン。メンバーは8人。
進 め 方 |
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内 容 |
@事例の紹介 |
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Aケアマネジャーが事前に準備した事例シートをもとに、事例の説明を簡単に行う。 |
A事例を掘り下げる |
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事例の内容をより詳しく知るためと共有するために、メンバーがAケアマネジャーに対して質問を行う。 |
BAケアマネジャーの葛藤や思いを確認する |
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Aケアマネジャーの気持ちを整理、確認、共有するための質問を行う。 |
C良いところ探し |
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この事例でキーパーソンとなるMさんの長女さんの良いところ探しを行う。 |
DAケアマネジャーへのアドバイス |
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Aケアマネジャーがこの事例と再度向き合えるように、また解決に向けてのアドバイスを行う。 |
※スーパーバイザーがいないピアスーパービジョンでは、雑談になりやすくまとまりも緊張感もないものとなってしまうので、司会者がしっかりとコントロールする必要がある。
3.今回のスーパービジョン研修でのポイント
- @良いところ探し
- Aケアマネジャーは、前任のケアマネさんから、Mさんの長女さんの悪い部分について聞かされています。そのことにより、先入観を抱いてしまい、長女さんの悪い部分ばかりに目が行き向き合うことができなくなっていました。
- また、そのAケアマネジャーの事例紹介を聞いたメンバーも、長女さんの悪い部分に目を向けてしまう結果になりました。
- そこで、この長女さんの良いところ、強さを探してみましょうという提案をしました。
- すると、以下のような長女さんの良いところ、強さを発見することができました。
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- ・要介護5の母親を、人的サービス利用なしで介護している介護力がスゴイ!
- ・苦情(自分の意見)をはっきり言える強さ。
- ・母親思い(Mさんも娘の側で暮らしていけるのは嬉しいと思う)。
- ・痰の吸引ができることがスゴイ。
- ・思い立ったらすぐに行動する行動力がスゴイ。
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- A自己覚知
- Aケアマネジャーは、事例報告やバイザーから質問を受け答えていく中で、自分の課題に気付きました。
- それは・・・
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- 「自分の中で、長女さんを避けたいという気持ちがあった。もっと関わりを深めていかなければいけないな」というものです。
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Bアドバイス
- アドバイスの中で、
- 「行政とのやりとりを支援経過に、時間、担当者、内容をなるべく細かく記載する必要がある。訴訟問題になった際や調査が入った時に、きちんと行政に報告したという証拠を示す必要がある。自分自身を守るためにきちんと記録をしておく必要がある。」
- というのが、Aケアマネジャーにとっては非常に有用なアドバイスとなりました。
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このレポートは、植田寿之先生・著対人援助のスーパービジョン よりよい援助関係を築くために
(中央法規)を参考に書いています。
植田寿之先生のホームページ
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