スーパービジョンの定義:
「対人援助を行う施設や事業所等において、スーパーバイザーによって行われる専門職としての援助者を養成する過程である。」
1.ケース紹介
概要 |
C職員は、新人教育、実習生の教育について悩んでいる。 |
相談内容 |
C職員−新人・実習生の教育を担当(男性・20代)より:
現在、新人・実習生の教育を担当しているが、多忙な業務の中で充分な教育が出来ていない。
・基本的な三大介護を充分に教えることが出来ないばかりか、研修が終わったその日の振り返りも充分に出来ていない。新しく入職した職員の悩みを聴いたり、相談に乗ることも充分に出来ていない。
・そのような状況の中、入職してもすぐに辞めてしまったり、長く勤めてもただの「介護マシーン」になってしまったりしている。
・実習生の中には、「お年寄りが好き」「介護に興味がある」という人が少なく、「他に仕事がないから」という動機の人が多くなった。特にヘルパー研修に来る人は、そういった考えの人が多い上に、関わる時間が非常に短い(1日のみの実習)。 |
検討したい内容 |
@時間の少ない中でどんな指導方法がよいか?
A人の気持ちを引き出すにはどうしたらよいか?
B短い期間の実習生に対して、どこに焦点を当てて指導すればよいのか?
C短い期間で意欲を持ってもらうにはどうしたらよいか? |
2.事例検討
・スーパーバイザーが8名(内1名司会)。周りで観ている方が5名。
進 め 方 |
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内 容 |
@自己紹介 |
→ |
バイジー、バイザー、周りで観ている方全てが自己紹介をする。 |
A約束事の確認 |
→ |
・一問一答で手短に質問する。
・自分の理論や一般論を言わない。
・否定的な言動はしない。
・裁かない。 |
B事例の紹介 |
→ |
C職員が事前に準備した事例シートをもとに、事例の説明を簡単に行う。
※事例発表後、C職員に検討したい内容の確認をする。 |
C事例を掘り下げる |
→ |
事例の内容をより詳しく知るためと共有するために、メンバーがC職員に対して質問を行う。
※ここでは、事例を深めるためだけではなく、C職員の自己覚知を促すことも目的としている。
※質問が一通り終わった時点で、C職員に検討したい内容の確認と新たに気づいたことがないかを確認する。 |
DC職員の強さを伝える |
→ |
バイザーが感じるC職員の強さを伝える。 |
EC職員の言葉 |
→ |
ここまででC職員が感じたことを話してもらう。また、検討内容についても再確認する。 |
Fバイザーからのアドバイス |
→ |
検討内容(C職員が知りたいこと)についてのアドバイスをバイザーが行う。 |
※時間は約1時間半。
※質問やアドバイスは周りで観ている方からももらうようにする。
3.今回のスーパービジョン研修でのポイント
- 自己覚知
- ・「B事例を掘り下げる」で、C職員は質問を受け答える内に、自分に足りない・出来ていない部分や課題を覚知していった。
- ・組織的な問題点にも気づくことが出来た。
-
-
- バイジーの強さ
- ・やる気があるから故の葛藤だと思う。
- ・若いのにそこまで考えていることがスゴイ。将来が楽しみ。
- ・新人や実習生の教育担当を任されるのは、上から選ばれた優秀な人と思うので自信を持って欲しい。
- ・こういった悩みをスーパービジョンに事例として出す事がスゴイ。
-
アドバイス
- ・スタッフに積極的に声をかける。常に心を配って声をかける。
- ・影響力のある人とどう協働していくかを考える必要がある。
- ・ひとつひとつ課題を与えることが必要。また、自ら課題を持てるように声かけを行う。
- ・(短い実習生に対して)嫌な思いをさせないで、気持ちよく帰ってもらう様に気を配る。
- ・声をかける時に名前を必ず呼ぶようにする。実習生や新人は名前を呼ばれるととても嬉しい。
- ・人材育成マニュアルを整備する必要がある。上への働きかけも必要。
- ・業務チェック表、自己評価表を活用すると良い。
- ・指導する側の意識の統一が必要である。
- ・教育を担当するもの同士の会議などを設けてはどうか。
- ・三大介護を伝えることと、仕事の楽しさ、生きがいなどを同時に伝えていくことが必要と思う。
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4.振り返り−最後にスーパービジョン自体を振り返り全員から言葉をもらいました。
・施設での業務や人材育成の苦しさが理解できた。
・勉強になった。
・人材を育成する立場の気持ちを、事例を通して良く理解できた。
・日頃の業務の中ではこういった機会を持つことが出来ないが、今回、特殊な会に参加できて非常に有意義だった。
・自分もこの事例のような悩みを持っていた時期があった。その時に、スーパービジョンしてもらう機会があれば違った道を歩めただろうなと感じた。
・他の組織の方々の意見を聞く機会を持つことが非常に大事だということを改めて感じた。
・質問をする時間が少し長かった様に感じる。アドバイスや気持ちに寄り添う時間をもう少し増やした方が良かったのではないかと思う。
・バイジーだけではなく、離職していった人達の気持ちについてもう少し深めてみたかった。
バイジーは・・・
・質問を受け答えする間に、自分の課題に気づくことが出来た。
・バイザーの皆さんからもらったアドバイスを取り入れていきたいと思う。
・新人や実習生が来るのが楽しみになってきた。
・組織的な取り組みについて上司と相談しながら改善していきたい。
最後に・・・
・質問の方法として、今回のスーパービジョンでは、「クローズド・クエスチョン」(はい・いいえでしか答えられない質問)が多かったので、「オープン・クエスチョン」(答えが限定されない、自由に答えられる質問)で質問する方がよいと助言する。
このレポートは、植田寿之先生・著対人援助のスーパービジョン よりよい援助関係を築くために
(中央法規)を参考に書いています。
植田寿之先生のホームページ
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