スーパービジョン1

1.定義
「対人援助を行う施設や事業所等において、スーパーバイザーによって行われる専門職としての
援助者を養成する過程である。」
直接的→援助者を支え、教育、育成し、環境を整えていくことで、バイジーが援助者として成長することを目指す。
間接的→バイジーが、援助者として成長することで、利用者に対して質の高い援助を行うことを目指す。

スーパーバイザー:スーパービジョンを行う者。
スーパーバイジー:スーパービジョンを受ける者。


2.機能
支持的機能
福祉の仕事は、人相手であり非常にストレスがたまる仕事です。福祉の仕事に情熱を燃やせば燃やすほど、その傾向は強くなります。スーパーバイザーは、そういった福祉の現場でストレスを抱えたワーカーを支える必要があります。

①バーンアウト(燃え尽き症候群)を防止する
福祉の現場では、二重のストレスがかかります。それは、人相手からくるストレスと組織からくるストレスです。ほどよい緊張感であれば、仕事に良い影響を与えますが、それが過度になると、心身ともに疲弊し、バーンアウトが起こってしまいます。バーンアウトの場合、原因の分からないいらだちやモヤモヤ感を感じ、意欲低下につながっていきます。そういったバーンアウトを未然に防ぐため、スーパーバイザーはバイジーを支える必要があります。

②自己覚知を促し、それに伴う痛みを軽減する
対人援助を行う際、援助者は自分自身のことをよく知って(自己覚知)おかなければいけません。自分自身のことを知っていないと、利用者との関係に支障を来してしまいます。ただ、自己覚知を促すことは、非常に痛みを伴うものとなります。自分の過去のつらい思いなどと向き合うことは、痛みを伴うことです。スーパーバイザーは、バイジーの自己覚知を促すとともに、それに伴う痛みも支えていかなければなりません。

③自己実現を支え、それに伴う葛藤を軽減する
福祉の仕事に携わる方は、熱い情熱や志を持った方が多いように思います。自己実現を図るために日々努力をされる。しかし、志が高い分だけ現実とのギャップに葛藤を抱く方も多いように思います。スーパーバイザーは、バイジーの自己実現を支えるとともに、その中で生まれてくる葛藤を軽減していかなければなりません。

*以上が、スーパービジョンの支持的機能の主なものです。支持的機能は、スーパービジョンを底辺で他の機能を支えるものであり、最も重要視されるものです。


教育的機能
経験の少ない援助者を育成するための機能です。

①理論と実践を結びつける
参考書や授業で習った技術や理念、知識が、現場でそのまま通用することは少ないです。また、現場で色々なケースに携わっていても、習った理論を生かすこととは困難です。こんな時、スーパーバイザーは、実際に起こっているケースと理論を結びつける必要性があります。そのため、スーパーバイザーは対人援助のプロフェッショナルでなければなりません。

②対人援助に必要な知識・技術・価値を伝える
福祉の仕事では、経験や勘が大切な要素でもあります。しかし、プロフェッショナルである以上は、その専門性を裏付ける技術、知識、価値を身につけていることが最も大切です。スーパーバイザーは、技術・知識・価値を自分自身の実践によって、または直接的な指導によりバイジーに伝えていかなければなりません。

対人援助に必要な価値:
利用者を個人として尊重し、利用者にとって意味ある自己実現を図ること。


管理的機能
言うまでもなく福祉の現場は、チーム・組織で動いています。援助者がその力を目一杯発揮できる環境を作り上げていくための機能です。

①能力を発揮できる職場環境を整える
②組織の一員として活動できるようにする

*厳しい職員管理や職員教育ではなく、職場環境や人間関係の調整を行い、一人の援助者が能力を十分に発揮できるようにすることが大切です。また、援助者の逸脱した援助活動を防ぐことを全面に出すものでもありません。


3つの機能の関連
支持的機能、教育的機能、管理的機能の3つが機能して初めてスーパービジョンがうまくいくことを忘れてはいけません。ただ、先に述べたように、支持的な機能はスーパービジョンの基礎となり、教育的機能、管理的機能の前提となります。



このレポートは、植田寿之先生・著対人援助のスーパービジョン よりよい援助関係を築くために (中央法規)を参考に、2008.2.21に書いたものです。