介護の新御三K③

【給料が安い】

まわりを見てみると、五人家族で家を購入して普通に暮らしている介護職員さんがたくさんいます。

ある男性ヘルパーさんにインタビューした際、今の給料でも十分に家族を養っていけます、と明るくお話しくださいました。

また、処遇改善手当や特定処遇改善手当が支給され、介護職員さんの給与に関して、随分と改善されているように感じます。
まぁ、この手当によるひずみがあることも事実ですが、今回はそれは置いておくとして…。

では、実際はどうなのか。

全産業の平均年収は441万円(平成30年分・国税庁)です。介護福祉分野は…397万円(平成30年分・国税庁)。

あれっ、やはり低い(涙)。
しかも、このデータは、医療・福祉の平均年収なので、お医者さんや看護師さんが入っています。なので福祉系だけだと、さらに低くなるのではないかと思います(更涙)

実際に現場で働いている方たちも、業務のわりに賃金が低いと感じている割合が大きいのも事実です。介護労働安定センターの調査では、不満・不安の第2位(39.1%)となっています。

ちなみに、正規職員の所定内賃金(月給の者)は平均 234,873 円です。平均支給賞与額は、598,379 円。


では、一般の人たちのイメージはどうか。

給料に関して、保護者や教員は安いとイメージしている割合が66%~90%でかなり高い数値を叩き出していました。

子どもたちの給料に関するイメージは、「できてない」というのが正直なところでしょうか。給料が安い(というイメージ)と答えた割合は28%~41%で、勤務する環境の問題同様、保護者や教員に比べるとかなり低い数値になっています。
福祉系の高校生では、給料が良い(というイメージ)と答えた割合は、50%となっています。


調査の中では、将来の進路について誰に相談するかという設問に、86%以上は保護者(1位)で、45.4%以上が教員(2位)となっています。

これらを見ると、本格的に進路を決める時点で、保護者や教員からの影響で介護の新御三Kが子どもたちの脳にインプットされ、結果、介護や福祉を目指す割合が減ってしまうという現象が起きていると考えられます。


介護のイメージは、ネガティブな新御三K(きつい・勤務の環境の問題・給料が安い)だけではなく、「やりがいがある」「社会的な評価がある」「カッコいい」などポジティブなものもありました。

良いところはどんどんと発信し、課題は1つひとつ地道に解決していくしか方法はないでしょう。

給料が上がり、子どもたちが目指す・親や教員が勧める職種になれば、当然人材が増えていきます。人が増えれば、きつい仕事も分担できるし、休みも取りやすくなる。

では、給料をどうやって上げるか。それには、自分たちの価値を上げる以外に手段はありません。つまり、研鑽・研修・研究によって、介護の価値を上げていくということ。

看護師さんたちは、長い年月をかけて自分たちの腕を磨き、研究を重ねて看護のエビデンスを世の中に発信してきました。介護の分野は、研究がかなり遅れていると言われています。見習わないといけませんね。

わたしが言うまでもなく、介護の仕事はとても尊い仕事です。自分を犠牲にしてご利用者のため、ご家族のため、地域の人たちのために力を尽くしている人をたくさん見てきました。その価値ある技術を、知識・知恵を、思いをきちんと可視化して、世の中に伝えていきませんか。簡単なことではないと思いますが、わたしはそれがしたい。

そう思い、この4月に「福祉まちづくりラボ コネクト・ワン」という研究所を創りました。

もし、同じ思いの方がいましたら、是非一緒に研究をしましょう!


このブログは、以下の資料を参照しています。
・上原千寿子、『福祉・介護の仕事に関する意識調査報告書』、社会福祉法人 広島県社会福祉協議会、2015.10、
https://www.fukushikaigo.net/other/images/report/report_ishiki.pdf
・『平成30年度 介護労働実態調査結果について』、公益財団法人 介護労働安定センター、2019.8、http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2019_chousa_kekka.pdf
・『福祉の仕事に関する意識調査報告書』、社会福祉法人 三重県社会福祉協議会、2019.1、
http://www.miewel-1.com/jinzai/miryoku/doc/H30report.pdf

2020年04月20日